万葉の植物  ほほがしは  を詠んだ歌
                                 2011.9.1 更新

 
  
   ほほがし は (万葉表記  保宝葉 保宝我之婆 保宝我之波 )       ホオ ( モクレン科)

落葉樹の「朴の木」。 大木になると高さは20mを越えることも。(左写真) 
花期は5〜6月。ただし樹高10m以上に生育しないと花を咲かせません。裏庭のホオノキが花を付けるのはさて、あと10年後でしょうか。白い花の直径は20センチ以上。
高い木の、高い枝に咲く花を撮影するのは、コンパクトデジカメでは至難のわざ。大きな葉が風に揺れてざわざわ騒ぎます。
昔からこの葉は、食べ物を載せたり包んだりするのに使われてきました。神饌にも用いられます。
万葉表記の「保宝葉」に、ホオの葉が尊重されていたことがよく現れていますね。
万葉集では、「ほほがしは」として葉が詠まれています。「柏・かしは」は、食べ物を盛る葉のことで、食事を扱う部門を「柏手・膳手・かしわで」と言いました。高山地方名物の朴葉味噌が有名ですが、落葉した葉で完全なものは少なく、いまだ我が家産の朴葉を使った朴葉味噌を楽しめていません。
子供の頃、農作業の昼食をこのホオの木の葉に乗せて摂った思い出のある方も多いのでありませんか。

ホオノキは、別名ホオガシワ、オオガシワ。日本に自生します。
彫刻材、漆器素地、版木、定規、箱、楽器、家具などに利用されます。忘れてはならないのは、下駄の歯。
栃木県は日光下駄で知られています。高級桐下駄のほか、普段使いの朴下駄も生産されます。

材質は緻密で均質、軽く柔らかいので加工しやすく、素人の木工工作にうってつけ。                                                    
                                       相棒の最新作 朴の額縁                                      


 我が背子が 捧げて持てるほほがしは あたかも似るか青き蓋           僧恵行   巻19-4204

 (この歌で、我が背子)と詠まれているのは、越中守・大伴家持のことです。主客である家持に寿詞を送り、相手を賛美しています。
きぬがさ(蓋)とは、長い柄を持ち、織物を張った傘。身分の高い人が外出するのに付き従う従者が、後ろから差しかざした傘を言います。)

 
 皇祖の 遠御代御代はい重き折り 酒飲みきといふぞこのほほがしは           大伴家持 巻19-4205
  
 (それに応えて家持は、「葉を折りたたんで酒を酌み交わしたものだ」と受けた寿詞にふさわしい返事を送ります。)