万葉の植物  はねず   を詠んだ歌
                             2011.5.3 更新

 

           

   はねず (万葉表記    朱華 唐棣 波禰受 )        ニワウメ  (バラ科)

奈良時代以前に中国から渡来した落葉低木。4月の終わりごろ、細い枝をしならすように枝いっぱいに花を付けます。

林鐘梅(リンショウバイ)の別名も。林鐘は陰暦の6月のこと。

実は丸い濃紅色で生食できるようです。ようやく苗を見つけ今年はじめて庭に植えました。、熟す6月が楽しみですね。
漢方では、核は利尿に、虫歯治療にと使われるようです。
 
万葉集には4首に詠まれています。
朱華色は濃いめの紅色。褪せやすく変色しやすい色。
朱華色に染められた衣服は、灰で洗濯すると色落ちすることから、「はねず色」は心変わりすること、あるいは移ろいやすい愛情を導く枕詞として使われるようにな りました。

 思はじと 言ひてしものをはねず色の  うつろひやすき我が心かも      坂上郎女  巻4-657
  
    (もう思うまいと言ったけれど、またしても恋しく思うわが心よ。なんと変わりやすいことか)

 夏まけて 咲きたるはねずひさかたの  雨うち降らば移ろひなむか      大伴家持 巻8-1485

   (この花のか弱く散りやすい様子が詠まれています。)

 山吹の にほへる妹がはねず色の  赤裳の姿夢に見えつつ         作者不詳 巻11-2786

   (夢に色が見える。珍しい表現ですね。山吹の黄金色と、ニワウメの明るい紅色と。この対比の美しさ)

 はねず色の  うつろひやすき心あれば 年をぞ来経る言は絶えずて     作者不詳 巻12-3074 

   (手紙は届く、でも心は届きません。移ろうのは人の心。)