万葉の植物  はながつみ   を詠んだ歌
                             2011.5.25 更新            

 

    
       ノハナショウブ                           ヒメシャガ

         
            ハナショウブ


   
はな がつみ (万葉表記  花勝見)    ノハナショウブ、ヒメシャガ、 ハナショウブなど (いずれもアヤメ科)

花勝見が現在のどの植物にあたるのかはっきり言えません。マコモ(イネ科)という説も強力です。 不明、なれど可能性は探ろうというスタンスで臨みます。
ここではアヤメ科の植物をご紹介しましょう。

 ノハナショウブ (アヤメ科 )

山野の草原や湿地に生える多年草で茎は直立し1mにまで伸びることも。葉は互生、中脈 が盛り上がり太いすじになるるのが特徴。花期は6月から7月。ニッコウキスゲに合わせたように咲く。赤みがかった濃い紫色 の、遠目にもつややかな花を咲かせます。
ハナショウブの原種。
写真は、沼ッ原湿原にて。後ろはニッコウキスゲの花後。
                (那須須連山西端の標高1200m前後に位置する亜高山の湿原)
  

ヒメシャガ (アヤメ科)

やや乾き気味の土地に生える多年草。 アヤメ科の植物なのに湿気を嫌い、体全体を地面よりも高く浮き上がらせ、冬の間にかれてしまったかと、植え主を慌てさせることもあります。
すんなりした葉は剣形で先は尖り、5月に10〜30aの細い花茎を伸ばして見るからに可憐なな花を開きます。
大きさは5センチほど。花の命は短くて、庭での花の時期は精いっぱい眺めて誉めてやることにしています。
全体の様子がシャガに似ていて、小さく可愛らしいので授けらた名前が「姫シャガ」。


ハナショウブ (アヤメ科)  写真は裏庭のハナショウブ

ハナショウブはノハナショウブの園芸種。ノハナショウブの色変わり種が選抜され、戦国時代か江戸時代はじめまでに栽培品種化したものとされています。
ご存じの通り花期は6月。梅雨の曇り空にも映え、碧い空にも輝く存在感のある花。
花の形や色幅は大きく、白、ピンク、紫、青、黄などさまざまで、5,000種類あると言われています。
我が家のハナショウブはごく単純な色目だけ。
 


  をみなへし 佐紀沢に生ふる花かつみ かつても知らぬ恋もするかも  中臣女郎  巻4-675
 

 「をみなえし」は、「咲く」から「佐紀沢」にかかる枕詞。
はなかつみ → かつても 同音の「かつ」に続けたもの。「をみなへし 佐紀沢に生ふる花かつみ」は「かつて」を導く序。
今までにない思いで貴方に恋しています。という意味になりますか。
 中臣女郎が大伴家持に贈った歌の5首のうちの1首です。
佐紀は、平城宮の北にあたり湿地や池が多かったようです。