万葉の植物  はは   を詠んだ歌
                                 2012.4.5 更新

 
  

   
はは   (万葉表記  母 波波 )       バイモ (ユリ科) 別名:アミガサユリ

中国原産の球根植物。鱗茎 で増えます。草丈は20〜50センチ。那須では4月の中旬、桜の花と同じ頃葉腋に下向きの花を一つずつ咲かせます。花の色は薄黄緑色。花の内部に紫色の網目状の紋があり、アミガサユリという別名を持つ由縁です。
球根は二枚の貝に似た鱗片状で、その姿から貝母(バイモ)と呼ばれます。 このため、ははくり・母栗とも呼ばれ、母百合の名前に結びつきます。球根が子を抱く母の姿に似るといわれますが、はて? 裏庭のバイモを掘りあげてみても痩せていて、その印象が少ない---。
生薬名は貝母。鎮咳・去痰・排膿薬・咳止め・痰切りなどに用いられていたようです。

 
 時々の 花は咲けども何すれぞ 母とふ花の咲き出来ずけむ     丈部真麻呂 巻20-4323

  (春夏秋冬、季節ごとに花は咲くけれど、なぜ母という花は咲かないのか。この母とは母親なのか、それともバイモの花なのか。

   父母も 花にもがもや草枕 旅は行くとも捧ごて行かむ          丈部黒当  巻20-4325 

  (4323の歌の後にこの歌が続きます。母系社会の時代、母を思う気持ちは切実なものがあったのでしょう。親しく懐かしい。慕わしく思う人を「花」に喩える --- やさしい心が偲ばれます。)