万葉の植物 あしつき   を詠んだ歌
                            2012.11.6 更新             

 

     


   
あしつき (万葉表記  葦附 )    アシツキノリ  ラン藻類   (ネンジュモ科)

淡水産の苔の一種。食用。淡水藻で、水辺に生える葦の根や、清冽な流れの中の石に付着して生長する藍藻の一種。
濃い緑色をした寒天質の塊で、ひだの多い袋状に育ち、大きいものは約10センチ。

万葉の時代には食用として珍重されました。県の天然記念物に指定され保存に努力が払われています。
漢名は、葛天米、天仙菜。カワタケアシツキ、カモガワノリとも呼ばれます
現在、アシツキを乾燥させて保存し食する方法が模索されているようです。
アシツキは傷みやすく、冷凍しても長期保存できません。乾燥させ保存し、水に戻して酢の物やつくだ煮に。ミネラル成分も豊富でしょう。どんな味がするのでしょうね。

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  雄神川紅にほふ娘子らし葦付取ると瀬に立たすらし  大伴家持 巻17-4021

   (雄神川は現在の庄川。もとは射水川に入っていました。娘子がアシツキを取ろうとして瀬に立っているらしい。川面がくれないに染まっているなぁ。万葉人は、 女性の「裳」が濡れている光景にいたく心を動かされたようです。 
越中国の国守として赴任した家持は、鄙の風物に心を響かせ歌を多く残しました。)    

  巻17には家持の赴任国を詠んだ歌が並びます。
      あゆの風いたく吹くらし奈呉の海人の釣する小船漕ぎ隠る見ゆ        4017

      港風寒く吹くらし奈呉の江に妻呼び交し鶴多に鳴く                        4018

      天離る鄙ともしるくここだくも繁き恋かもなぐる日もなく                    4019

      越の海の信濃の浜を行き暮らし長き春日も忘れて思へや               4020

      鵜坂川渡る瀬多みこの我が馬の足掻きの水に衣濡れにけり          4022

      婦負川の早き瀬ごとに篝さし八十伴の男は鵜川立ちけり              4023

      立山の雪し消らしも延槻の川の渡り瀬鐙漬かすも                        4024

      志雄路から直越え来れば羽咋の海朝なぎしたり船楫もがも           4025

      鳥総立て船木伐るといふ能登の島山今日見れば木立繁しも幾代神びぞ    4026

      香島より熊来をさして漕ぐ船の楫取る間なく都し思ほゆ                           4027

      妹に逢はず久しくなりぬ饒石川清き瀬ごとに水占延へてな                      4028

      珠洲の海に朝開きして漕ぎ来れば長浜の浦に月照りにけり                    4029