万葉の植物 あさざ を詠んだ歌 2012.12.1 更新 |
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あさざ (万葉表記
阿邪左 阿佐佐 ) アサザ (ミツガシワ科) ミツガシワ科の多年生植物。写真のように水に浮く葉の間から花柄を伸ばし、初夏にカラスウリの花に似た黄色い花を咲かせます。葉の縁が波打ち鋸歯があることが良く似たガガブタとの違いです。 葉の表面は綺麗な緑、裏側は紫褐色。地下茎を伸ばして繁殖します。ごく水深の浅い場所に生育することから「アサザ」と名づけられました。 また、もつれ合い絡まる意味の「あざふ」、「あざなふ」の「あざ」から来たとも言われます。 食用にならないことから、イヌジュンサイ、ハナジュンサイなどの別名を持ちます。 花を髪に飾る---その生命力を身につけるために始まりましたが、やがて装飾品になり、材料もさまざま使われ現在の頭飾りに結びつきます。乙女心をこの黄色い花が飾ったのですね。緑の葉の間から、群れて咲くアサザの花は目立たないまでも、なかなか美しいものです。 |
うちひさつ 三宅の原ゆ 直土に 足踏み貫き夏草を 腰になづみ いかなるや 人の児故そ 通はすも吾子 うべなうべな 父は知らじ 蜷(みな)の腸(わた) か黒き髪に 真木綿もち あざさ結ひ垂れ 大和の 黄楊の小櫛を 抑えさす さすたへの子 それそわが妻 (長歌) 作者不詳 巻13-3295 (珍しく一つの歌が二段に構成されている歌。前半は父の息子へかける言葉。後半はそれに応えた息子の歌。息子よ、どこかよその娘さんのところへ通っているのだな。父様もご存じない、母様も気づいていない。黒々とした髪に木綿であさざを結びつけて垂らし、大和の黄楊のくしを髪に挿した誠に美しい娘、それが私の思う妻ですよ。) |