万葉の植物  あさがほ   を詠んだ歌
                           2010.5.27 更新                                        


   

  

   あさがほ (万葉表記
 朝貌 朝顔 安佐我保 桔梗) キキョウ (キキョウ科 左写真) 

日当たりの良い草原や林縁などに自生する多年草。背の高さは40から100センチくらい。
8月中頃から咲き始める秋の七草の一つです。
根は漢方薬で使われ、去痰の効用があるとされています。正月の屠蘇散の材料としても利用されます。
最近は品種改良によって背の低い品種も作出されているようです。
夏の朝、みずみずしく透明感さえ感じるこの花が、朝露に濡れて咲く様子には惹かれます。
朝は神霊がほのかに姿を現す時。   霊性を感じる麗しい花、すなわちあさがほ。

むかしむかし。子供の頃のことでした。
盂蘭盆にお墓参りをする途中、草むらのなかに自生する桔梗を見つけて祖母に褒められ、とても嬉しかったのが印象に残っています。女郎花、桔梗と自然の中に咲く花をお供えするのが、仏様にとって一番喜ばしいことだと教えられました。                                    

万葉集に詠まれた「あさがほ「は、このキキョウのほかにムクゲ、ヒルガオ、アサガオだという説がありますが、「アサガオ」は奈良時代には渡来していないこと、「アサガオ」も「ヒルガオ」も夕刻にはしぼむことから現在はこのキキョウが最有力視されています。

    次に有力な「ムクゲ」説です。

 
  あさがほ (万葉表記 朝貌 朝顔 安佐我保 桔梗) ムクゲ (アオイ科 右写真)                             

中国原産の落葉低木。高さは3mから4mに達します。
夏の初めから秋にかけて、一日花を次々に咲かせ、全体の花期はとても長い花木です。
木槿を音読みすると、和名のムクゲ。一日花であることから、
槿花一日の栄(白居易)---心の移ろいやすさ、しばしの宴、うたかたの栄華。
そして「朝生暮死」という言葉もありますね。
一日で終える花の命から、禁花(祝儀に使わない)。
ひとときの命を尊ぶことから茶の真髄を知る花。両方の解釈が出来る花です。
韓国の国花。
 

 芽子が花尾花葛花なでしこの花女郎花また藤袴朝貌の花        山上憶良  巻8・1538

  朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲きまさりけり        作者不詳 巻10・2104

  展転まろび恋ひは死ぬともいちしろく色には出でじ朝貌の花       作者不詳 巻10・2274

  言に出でていはばゆゆしみ朝貌の穂には咲き出ぬ恋もするかも     作者不詳 巻10・2275
 
  我が目妻人は放くれど朝貌の年さへこごと我は放るがへ        東歌 巻14・3502