ラヴェンダー

 ラヴェンダー Lavender 
                           (Lavandula シソ科ラヴァンデュラ属)  Lavandula Angustifolia

 ラヴェンダーは、地中海沿岸を原産の常緑小低木。一見草本のようですが、木本で、生長は遅いものの年々大きく育ちます。芳香で知られるだけでなく、殺菌作用や防虫作用もあることから、ミス・ラヴェンダーの母親は、防虫効果も期待して、シーツにラヴェンダーの香りを移していたのでしょう。 花言葉は「心に秘めた愛」、「貞節」、「じっと待っています」。 このロマンスになんとふさわしい花ことばでしょうか。
語源は「洗う」を意味する「lavare」というラテン語。古代ローマ人が香油を風呂に落としたり、衣類の香りづけとして利用したりしていたから、と言われます。
香油の材料としては、フランス南部のものが有名です。香りの女王といっても言い過ぎではありません。
私も催眠剤として枕に一滴垂らすということを続けています・・・・効き目はあらたか。
 

「あなたがた、めいめいにラヴェンダーの花束をあげましょうね」 ・・・・・「とてもいい匂いでしょう? 母が大好きだったのですよ。この土手にずっと植えたのは、母なんですの。父もそれはそれは好きでしてね。それで私にラヴェンダーという名を付けたのですよ。 
                 『アンの青春』第21章  ミス・ラヴェンダー

 そしてその晩、休んだ客間のベッドのシーツがラヴェンダーの匂いがするので、父は一晩じゅう、目を覚ましていて母のことを考えていたのですって。それからはラヴェンダーの匂いが大好きになって・・・ 
                 『アンの青春』 第21章  ミス・ラヴンダー

 ("I'm going to give you girls a bunch of lavender apiece," said Miss Lavender brightly, as if she had not heard the answer to her question. "It's very sweet, don't you think? Mother always loved it. She planted these borders long ago. Father named me Lavender because he was so fond of it. The very first time he saw mother was when he visited her home in East Grafton with her brother. He fell in love with her at first sight; and they put him in the spare room bed to sleep and the sheets were scented with lavender and he lay awake all night and thought of her. He always loved the scent of lavender after that. . .and that was why he gave me the name. Don't forget to come back soon, girls dear. We'll be looking for you, Charlotta the Fourth and I." )
 



収穫の時期には遅いけれど


 
 



      庭のラヴェンダーが朝日に輝く
      まだつぼみ。もうすこし。

 


      6月20日

  裏庭のラヴェンダーを切り取り、
  長く病む友人のために、サシェを作り始めました。
   
       

日本のラヴェンダーは、何と言っても北海道の富良野。
あたり一面に広がる、ラヴェンダーやポピー、サルビア、秋のコスモスの花畑の美しさときたら、これぞ北海道!でしょう。

北海道で本格的に栽培が始まったのは、第二次世界大戦後の1950年代から。
次々に特有の品種が開発され、今のラヴェンダー生産地としての地位を築きました。
優良品種として、オカムラサキ(丘紫)、ヨウテイ(羊蹄)など。
 

ラヴェンダーを代表的な種類に分けると。
@
アングスティフォリア系   別名イングリッシュラヴェンダー。香りが強く耐寒性あり、日本の夏は苦手。
A
ラバンディン系        花穂が大きく成長も早い。挿し木で増やす。
B
デンタータ系         寒さに弱い。
C
 ストエカス系         兎の耳のような可愛らしい花。耐暑性あり、耐寒性なし。
D
プテロストエカス系      レースラヴェンダー 寒さに弱い。 

かねて原文にある、「学校が始まり、いつしか、黄金色と真紅の美しい十月になった。」この描写と、「あなたがた、めいめいにラヴェンダーの花束をあげましょうね」、ここのところがどうにも納得できないでいました。Dのレースラヴェンダーの花期は秋、しかし、寒さに弱い。この1種類を除くといずれも花期は7月から8月。原作の花は、耐寒性のあるイングリッシュ・ラヴェンダーの可能性が一番強いのですが、原文の描写に合致しません。ラヴェンダー、特にイングリッシュ・ラヴェンダーの花期は7月から8月。10月にはすでに花は終わり、そろそろ葉も冷気に傷み始めているはずですから。 2番花を咲かせるには、気候が厳しすぎるとも考えられます。おそらく、ミス・ラヴェンダーは、サシェ(におい袋・香り袋)を 母親の記憶を閉じ込めるように沢山つくったのでしょう。
冬の夜を香りで暖めるために。
あるいは、そのまま乾燥させ、小さな花束にしたのかもしれません。暖炉のそばに並べると部屋中に香りが立ち込め、夢心地にさせてくれることでしょう。
 

*****  イギリス映画 『ラヴェンダーの咲く庭で』。*****

1936年、大戦前夜のイギリスが舞台。ジャネットとアーシュラの老姉妹のもとに現れた、若きヴァイオリニストの青年・アンドレアとの関わり合い、彼に対するほのかな思い・・・短く幸せな夏・・・それは人生の宝石箱。

この映画、是非観てみましょう。

追記 (2018.10.6)
緑の指を持つミス・ラベンダーは、一番花を早めに収穫し、秋に2番花を咲かせたのかもしれません。
こう教えてくださったHさん。どうもありがとうございました。

更に追記(2020.1.8)ラベンダーが二季咲きに改良されたのはこの数十年のこと。したがってやはり訳文にしっくりきません。