(キャサリンは) リンド夫人からは華やかなクローセ編みの毛布、ドーラからはにおいしょうぶの根の香袋(a
sachet of orris root)、ディヴィーからはペーパーナイフ、マリラからは小さな瓶につめたジャムやゼリーを一籠・・・・・・・・そして・・・かわいい、褐色の目をした、小さな子犬だった。
『アンの幸福』 2年目 6
(They
opened the parlor and distributed the gifts before breakfast because
the twins, even Dora, couldn't have eaten anything if they hadn't.
Katherine, who had not expected anything except, perhaps, a duty
gift from Anne, found herself getting presents from every one. A
gay, crocheted afghan from Mrs. Lynde . . . a sachet of orris root
from Dora . . . a paper-knife from Davy . . . a basketful of tiny
jars of jam and jelly from Marilla . . . even a little bronze chessy
cat for a paper-weight from Gilbert.
And, tied under the tree, curled up on a bit of
warm and woolly blanket, a dear little brown-eyed puppy, with alert,
silken ears and an ingratiating tail. A card tied to his neck bore
the legend, "From Anne, who dares, after all, to wish you a Merry
Christmas."
「まあ、あんたのとこのシーツはいい匂いがするのね」二人が床にもぐりこむと、デリラが感心した。「スーザンがいつも鳶尾(いちはつ)の根で煮るのよ(Susan
always boils them with orris root)」 デリラは溜息をついた。「自分がどんなにしあわせなのか、あんたにわかっているかしら・・・
『炉辺荘のアン』 第40章 裏切り者!
("My, but your sheets smell nice!" said
Delilah as they snuggled down.
"Susan always boils them with orris root," said Diana.Delilah
sighed.
"I wonder if you know what a lucky girl you are, Diana. If I
had a home like you . . . but it's my lot in life. I just have to
bear it.")
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オリリスとは、根茎に芳香があるアヤメ属の多年草のこと。
アンシリーズ全巻で、このorris
rootが出てくるのは上記の2箇所だけ。
原文はorris rootと同じ言葉を遣われていても、「においしょうぶ」と「いちはつ
」、違う名前で訳されています。このorris rootは、単に匂い付けだけのために遣われたのでしょうか。
昔は、シラミやノミ退治のために、衣類を煮洗いをしていました。
匂いの良いアヤメ科の植物と言えば、日本では端午の節句の菖蒲(ショウブ科)を連想します。ですから、はじめの「においしょうぶ」は適訳。しかし次の「鳶尾(いちはつ)の根」
も、
におい菖蒲と訳して欲しいところです。
イチハツはその名の通り、他の種類に先駆けて、春一番に咲くアヤメ科の花のことですから。『マリゴールドの魔法』(第8章 それ?) 青い浜屋敷に招待されたマリゴールドは、ディナーの席で頭にシラミがたかっているのが見つかり、そのあとは大騒ぎ。「公立の小学校に通う子供にはよくあることなの」と、医者であるマリゴールドおばに一蹴されて一件落着しましたが、よくあることだったのでしょう。
このにおいしょうぶのページでは、いつも浮かんでくるシーンを、頭を振って追い出すのです。
それは『風と共に去りぬ』の中のある場面。
タラ屋敷に南軍の帰還兵が立ち寄る、その兵隊達の衣類をはがし取り、大釡で煮洗いするディルシーの太くたくましい腕。スカーレットからも一目置かれているディルシー。そこへフランクが帰還する・・・・。 やがてアシュレーも。
追記 2017.9.15
三年我慢だぞ
このイリスの香りにはバイオレットに似たイロンという香りの成分が含まれていて、古代ギリシャ・ローマ時代から香水の原料として利用されていました。その抽出方法は:
3年ほど肥育栽培し、その根を2〜3年間乾燥保存すると、青臭いジャガイモのような香りが、イリス特有のスミレに似た香気を放つようになります。
おそらく炉返荘でスーザンが用いていたのは、この段階の球塊だっとと考えられます。
そののち粉砕し、水蒸気蒸留を行い、アルカリ処理したものが「イリスアブソリュート」(イリス精油)。これは最も高価な天然香料のして知られ、揮発性が低く香りの持続時間が長いことが特徴です。 |