オオハンゴンソウ 

  オオハンゴンソウ  Golden glow   キク科オオハンゴンソウ属

キク科ルドベキア属は北米原産の耐寒性の強い一年草または多年草。明治のころ渡来しました。
なかでもGolden glow(金色に輝く花の意)は多年草の代表的な種類で、日本の山野でも野生化しているオオハンゴンソウのこと。

このオオハンゴンソウの園芸品種のハナガサギク(別名ヤエザキオオハンゴンソウ)も、地方の古い庭などによく見られます。
一年生種もあって、葉や茎に粗い毛のあるアラゲハンゴンソウ(英名blackeyed Susan, yellow daisy)、種間交配の技術により作り出された園芸品種も多く、アラゲハンゴンゾウの改良種のグロリオサ・デージー(英名Gloriosa Daisy)は多様な色合いや姿の花を咲かせ、いずれも夏の風景を彩る背の高い鮮やかな花。
      
  

 
  
アンは万年筆が自分の手に押しつけられるのを感じた。もう一瞬というそのとき、ドレイク嬢が血もこごえるような悲鳴をあげたので、・・・アンはベンチのわきに生えているゴールデン・グロー(golden glow)の茂みの中へ万年筆を取り落し、呆然と、相手を眺めた。 
                                                                       『アンの幸福』 3年目 
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(Anne felt the fountain-pen being forced into her hand . . . another moment . . . and then there was such a blood-curdling shriek from Miss Drake that Anne dropped the fountain-pen under the clump of golden glow that flanked the rustic seat, and gazed in amazed horror at her companion.)
 

あらあら。ブナ屋敷の女主人、ミス・バリーだとこうおっしゃるでしょうね。

「アンさんや、しっかりしなさい。はっきり断ればいいんだよ。あなたらしくもない」と。

宗教の勧誘、投資はいかが、生命保険に入りませんか。
こういう押しつけがましい勧誘には、年齢を積み、回を重ねるごとに対応が上手になっていくものですが。
押し売りから「髪の毛を緑色に染める薬」を買った年齢からすでに十年近く経っているでしょう、アン。
もっとも、このドレイク嬢ほどの人物にかかっては、たかが十年の人生経験などなんの役にも立たないのかもしれませんけれどね。
こういう時、どういう心境なのでしょう。自分の身に引きつけて考えてみても、ただ茫然とするばかり?
No.と言う自分を直視できない、押し切られてしまう、誰にでも自分が良い人間だと思ってほしい、あるいは、偽善?
 

   オオハンゴンソウ 夏の空に背を伸ばし
 

   ハンゴンソウ(反魂草)薬効ありとされる 
           (会津、加仁湯温泉)

 ところが、このオオハンゴンソウですが・・・問題児なのです。

先日尾瀬の奥の村まで出かけました。山と山の間の、谷とも言えないほんのわずかな空間にさえ、このオオハンゴンソウが繁茂しているのを見ました。
この花は環境省指定特定外来生物で、法律には、

「日本の生物を捕食したり、これらと競合したりして、生態系を損ねたり、人の生命・身体、農林水産業に被害を与えたりする、あるいはそうする恐れのある外来生物による被害を防止するために、それらを「特定外来生物」等として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入等について規制を行うとともに、必要に応じて国や自治体が野外等の外来生物の防除を行うことを定める」 。

とあります。

さらに罰則もあって、「販売・頒布目的での飼養、不正な飼養、許可のない輸入や販売、野外へ放つなどの行為に対しては、個人には3年以下の懲役や300万円以下の罰金が科される」のです。素知らぬ顔をして那須の山野にもはびこるこのオオハンゴンソウを目にするたび、鮮やかで夏らしい花じゃないの、という思いと、これって違反植物なんだけど、という思いが交錯し、なんとも複雑な心境に陥ります。
退治するには相手が強すぎて、全村挙げての防除・駆除作戦を敢行するしかありませんが、みな忙しい村民たちです。
それにきれいな花をなぜ抜くの?という素朴な疑問になかなか答えを用意できません。

日本には、在来種としての「ハンゴンソウ」(キオン科、反魂草)が存在します。
反魂とは、命を呼び返すという意味。
昔は、コレラの下痢止めとしての薬効が利用されたことから、魂を呼び返す草、との名誉ある名前が付けられたのです。ところが、明治に入り北米から Golden glowが渡来し、見かけが良く似ていることから、その花はオオハンゴンソウと名付けられました。その生命力たるやとてつもなく強いもので、いまや日本自生のハンゴンソウを脅かす存在に成り上が りました。