ひえんそう   ちどりそう

 デルフィニウム 大飛燕草 Delphinium  キンポウゲ科  (Delphinium Elatum) 
   
チドリソウ   千鳥草  Delphinium  キンポウゲ科  (
Delphinium consolida)

ヨーロッパ原産の多年草植物。
草丈は種類や環境により30センチから2メートル近くまで。
耐寒性は強く、その分暑さに弱い。多年草タイプは、寒冷地で普通に夏越しします。
花色も青を基本に多種類あり、長く伸びた花茎に総状につけ、花の盛りの美しさは、時の経つのを忘れそうなくらい。

園芸上は多年草化するのを、デルフィニウムと呼び、秋に発芽して冬を越し、初夏に花を咲かせる一年草の種類は千鳥草と呼び分けることが多いようです。
 日本名を ヒエンソウ(飛燕草)。
花の形をイルカに見立てるヨーロッパでは、ギリシャ語のイルカ(Delphis)を表すデルフィニウムと、日本では飛ぶ燕に重ねて飛燕草と呼びます。
別名は千鳥草。いずれも鳥の名前を花に付けているのが興味深いですね。
園芸店や庭の紹介本で見かけるのは、背の高いデルフィニューム・シネンシス Delphinium chinense

私は、草丈が短く、小茎をたくさん出して派手やかに咲くスプレータイプの種類の種を蒔き、初夏の花を楽しみます。園芸種名は「ブルーミストラル、Blue Mystral」。
ミストラルとは、アルプス山脈からローヌ河谷などを吹きおろし、地中海に達する寒冷で乾燥した北風のこと。 
おや?少しイメージが違いました。

さて、シリーズの中に出てくる Delphinium とはどの花でしょう。私の見立ては:
炉辺荘に咲いているのは、一年草タイプのヒエンソウ。原産地ではほとんど雑草化するほど強くて、時機になると鮮やかな青色の花をとりどりに咲かせます。

ルーラさんの庭のDelphiniumは、「有名なひえんそう」、「さらに「ひえんそうの茎(delphinium-stalks.)なので、イングリッシュ・ガーデンの主役を張れるデルフィニウム(おおひえんそう)。下の写真参照。
 

 ふたたび、気をもむ縁結びの役に幸運が加勢してくれた。ある晩、ステラが炉辺荘の千鳥草(delphiniums)を見にきたので、そのあと二人はベランダにすわって話をした。
                                                                                『炉辺荘のアン』第17章 オールデンとステラ

白い柵のところには、ルーラさんの有名なひえんそうが青い松明のように咲いている。マリゴールドはちょっと立ち止まって花に見とれた。・・・・ひえんそうの茎の間から・・・・
                                                                           『マリゴールドの魔法』 第16章 ランプの灯

 (Lula's famous delphiniums were holding up their gleaming blue torches by the white paling.
    
Marigold could see the pantry-window through the delphinium-stalks.)
 

 スイス、シャレーの庭に咲く大ヒエンソウ
 


 
  イギリス、コッツウォルズの村で

デルフィニウム。
この名前を聞いてまず感じるのは、すずやかさ、さわやかさ、そして矜持・・・・更には孤愁。

炉辺荘の夕暮れのしじまにこの青い花が咲き、次第に夕闇に溶け込んでいく様子や、背の高さゆえ、柵にもたれて咲く、青い松明のような花の姿の美しさ。デルフィニウムはその花だけでなく、すんなり伸びた花茎の長さや、それが作る影をも観賞の対象になるのです。 

炉辺荘の庭でも、ルーラさんの家の前庭でも、島の気候ではこうでしょう。
暖かくなると芽を出してぐんぐん背を伸ばし、やがて世間の口に登るほどの立派な花を付ける・・・と。
園芸家としてこんなに誇らしい気持ちになることはありません。
冬の寒さあっての夏の涼しさです。人間、無い物ねだりしがちです。
「夏の涼しさ」。これは羨ましい限り。

キンポウゲの仲間ですから、植物毒(デルフィニン)を持ち、万一食べると下痢、嘔吐を起こし死に至ることがあるので注意してください。
それもそうです。仲間にあの名高いトリカブトがいるのですから。

参考までに、わがバターカップスも毒を持ちます。
ぽきりと折り取ると白い液が流れ出しますね。あれを触るとかぶれることもありますよ。
ただし乾燥すると大丈夫。アンの小さい手は、教会に行った夜にかゆくなかったかしら。