ブナ     

 ブナ   Beech  (Fagus crenata  ブナ科ブナ属

ブナはブナ科ブナ属の落葉高木。
温帯性落葉広葉樹林の主要な樹木で、森の女王とも呼ばれます。実は(beech nut)、トゲのある殻に包まれ、完熟すると殻が割れて落ち、野鳥やリスなど森の中の動物たちの大事な食物になります。
特に日本では、冬眠に入る前の熊にとっては重要な食物。しかし島には熊が居ないですね。
プリンス・エドワード島のぶなは、Red beechアメリカ・ブナ・American beech)と呼ばれ、名前の通り赤みのある木材(ビーチ)は家具や鉄道の枕木などに用いられます。

花言葉は繁栄。
ダイアナの大伯母ミス・バリーはぶなの木屋敷に住んでいます。資産家の屋敷を取り囲むにふさわしい木です。

 正午近くに一同は町に着き「ぶなの木屋敷((Beechwood)へ向かった。それはまったく古いりっぱな屋敷で、街道からひっこんだところに、青々としたにれや、枝葉をさしかわすぶなの木立ち(green elms and branching beeches)にかこまれていた。ミス・バリーは鋭い、黒い目を愉快そうに光らせながら玄関に出迎えた。    
                      『赤毛のアン』第29章 忘れられないひとこま   

 (It was almost noon when they reached town and found their way to "Beechwood." It was quite a fine old mansion, set back from the street in a seclusion of green elms and branching beeches. Miss Barry met them at the door with a twinkle in her sharp black eyes. )

アンはひまなときや、たいていの日曜日は「ぶなの木屋敷」ですごし、ミス・バリーと一緒に教会へ行った。                                          
                     『赤毛のアン』第35章 クイーン学院の冬

(Anne spent many of her spare hours at Beechwood and generally ate her Sunday dinners there and went to church with Miss Barry. )

・・・・さあ、もう試験の話はやめましょうよ。あの家の上のうす緑の空を見てごらんなさいな。そしてアヴォンリーのうす暗いぶなの森(the purply-dark beech-woods)が、どんなようすをしているかを想像してごらんなさいよ」                       
                     『赤毛のアン』第35章   クイーン学院の冬           

(Girls, don't talk about exams! Look at that arch of pale green sky over those houses and picture to yourself what it must look like over the purply-dark beech-woods back of Avonlea." )
 

   青森 八甲田山の日本ブナ
 

   那須連山 八方山の日本ブナ

『赤毛のアン』に引用されているブナなは5件。入学試験の夜や、町での生活のアクセントとして、あるいは試験結果の発表の前にぶなの森に思いを馳せる、と言ったシーンの背景に ブナが出てきます。

小さい、可愛らしい花、涼やかな林、小川といった身近なものよりも、将来を見据え、自分の人生をどう生きていくか、切り開いていくのか、と言った場面での ブナの木は、どっしり落ち付いていて、アンを背後から守っているような存在です。

日本のブナは、Japanese Beech
自生種は幹が灰色のブナノキ(シロブナ)と、幹が暗褐色のイヌブナ(クロブナ)があり、写真は青森の八甲田山のブナと那須連山八方山のブナ。

斜面に生えている八方山のブナは、幹の途中から四方に枝が伸び、折れ曲がり、『ぶなの木屋敷』のの描写にあるように、「枝をさし交わして」います。

○ 昏れがたの秋の林はおごそかにひともとの樹が地平を統べる  (か)  
          
 日本ブナの実