万葉の植物  あからがしは  を詠んだ歌
                                                                                                                                                                2010.5.29 更新

   
  
  * 上の2枚の写真は、アカメガシワの仲間の「オオバアカメガシワ(オオバベニカシワ)」です。
     現在、本物を鋭意探索中。アカラガシワの写真をアップするまで、これでお許しを。

   
   
あからがしは (万葉表記 赤柏 安可良我乃波)   アカメガシワ (トウダイグサ科)     

生長の早い落葉高木。早春萌え出たばかりの新葉には紅赤色の星状毛がびっしり生えていて、赤く見えます。
その後季節が進むと細毛が落ち、灰白色を帯びた緑色に変わります。
大きな葉が特徴的で、葉を食物を盛るのに使われたことから、五菜葉、菜盛葉、御菜葉と呼ばれていました。
多くブナ科のカシワ(柏)を使ったことから「食べ物を包む木の葉 」を「かしわ」と総称していました。
その後、
食器や平手へと意味が転じていきます。

雌雄異株。
葉や樹皮、種子から赤色の染料を取り、材は緻密で、床柱や下駄、琴の材料として利用されています。

 伊奈美野のあから柏は時にあれど君を吾が思ふ時はさねなし  安宿王 巻20・4301

この歌が詠まれたのは天平勝宝6年(754年)新年の宴が開かれていた時。
孝謙天皇に対し新年を寿ぐ歌として播磨守安宿王が奏上した歌。
集中アカラガシワの名前が挙がるのはこの1首のみ。
アカラガシワは柏(カシワ・ブナ科)とも考えれられていますが、柏の新葉は赤くないので、歌にふさわしくないようです。


 ひさぎ (万葉表記 久木 歴木)  

アカラガシワは、赤芽槲と書き、古くはヒサギ(久木)と呼ばれていました。
またヒサギはキササゲ(木大角豆・ノウゼンカズラ科)と目されていたこともありました。

時代により、場所により、ある植物の呼び名が変化してきているので、実際に万葉人がどの植物を共通のイメージとして持ち、歌の形として表現していたのかは判別しにくいようです。
想像を巡らす余地があるので、喜ばしいことと考えるべきなのでしょうか。

 ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く   山部赤人   巻6・0925

 去年咲きし久木今咲くいたづらに地にか落ちむ見る人なしに     作者不詳    巻10・1863

 波の間ゆ見ゆる小島の浜久木久しくなりぬ君に逢はずして      作者不詳    2753

 度会の大川の辺の若久木我が久ならば妹恋ひむかも         柿本人麻呂  12・3127