万葉の植物  あぢさゐ   を詠んだ歌                                                                                                                                               2012.8.12 更新

 

            
         アジサイ                            ヤマアジサイ
    
  
   タマアジサイ   つぼみはまんまる         コアジサイ  いい香り 装飾花を持ちません。
                                               


   
あぢさゐ (万葉表記  安治佐為 味狭藍 )        アジサイ  (ユキノシタ科)

ユキノシタ科アジサイ属の落葉低木。花期は6月から7月。
梅雨時の薄白い空に良く似合う、爽やかな色合いの花が多いですね。
本州に自生するガクアジサイを改良した日本原産の植物。シーボルトが『日本植物誌』において恋人の名前を取りアジサイを「オタクサ」と名づけた話は良く知られているところでしょう。

4枚の小さな花が群がって咲いているようですが、花と見えるのは、実はガク。
球体の花は多数の装飾花 --- ガク片があつまったもの。 
和名のアジサイの語源は=
  あじ=あつ 集まること
  さい=真藍(さあい)から → 青い花が集まって咲くこと。集真藍(あづさあゐ)

万葉時代からこのアジサイが栽培され、あるいは庭の景色を彩っていたのかと思うとある感慨を覚えます。
アジサイの花の色が変化するのは、土壌の酸性度によるもの --- 酸性土壌では青、アルカリ性土壌では赤。土壌中の窒素やカリ量 でも変化するようです。
ここ那須では、土壌が火山灰土で酸性度が強いことから、アジサイの青の花色がひときわ冴えて見えます。
 

花びらが幾重にも重なる。色が変化する、といった比喩に使われています。集中2首のみ。

 言問はぬ木すら紫陽花諸弟らが練りのむらとにあざむかえけり       大伴家持   巻4-773

   (物言わぬ木でさえ移ろいやすいものがある。その巧みな言葉に欺かれました。 移ろい易い人の心をアジサイの色変化に託して詠んだ歌。アジサイは花色が変化するだけでなく、めしべが退化していて実を結ぶことがありません。そのことから不実なという意味を持たせます。)

 紫陽花の八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ  橘諸兄      巻20-4448

  (天平勝宝7年(755年)、右大臣丹比国真人の家出、左大臣橘諸兄を招いて宴が催されました。その席で諸兄が主人を祝い詠んだ歌。八重、八つ  --- 幾重にも群がって咲くお屋敷のアジサイのように、貴方様のご健康と繁栄を祈ります。といった意味でしょうか。)